ぶたと医学

 世の中にはブタほど不幸な動物はいないかもしれません。主に人間に食べられるためにうまれてきた上、いろいろな悪口のもとにもなっているのですから。しかしブタは、我々人間にとって、重要なタンパク源であるとともに、それ以上とも言える大きな役割を果たしています。その役割とは、医学の世界での役割です。これを知れば、あなたのブタに対する見方が、ちょっと変わるかもしれません。
 私達がふだんお世話になっているいろいろな薬の開発や、様々な病気の研究の際、動物を使って実験が行われます。このことに関しては倫理的に難しい問題も含んでいますが、現状では動物実験なしでは研究が進まないのが事実です。このような実験に使用する動物は、人間により近いものほど都合が良いのですが、実はブタと人間とは、組織学的に、あるいは生理学的に、人間と似ているところがたくさんあるのです。例えば・・・
  • 臓器の大きさが人間と似ている
  • 皮膚を作っているたんぱく質の組成および量が似ている
  • 冠状動脈(心臓に栄養や酸素を運ぶ動脈)の分布が似ている
  • 最低血圧が50〜90mmHg、最高血圧が100〜140mmHgである
  • 雑食性のため、消化吸収の生理が似ている
  • 目の構造が似ている
  • ミニブタの場合、成熟体重が人間に近い
 等々のことがあげられます。また、繁殖が簡単で多産であり、群居性があって人にも良く馴れるので、実験動物としての価値が非常に高いのです。
 最近では、糖尿病の治療にブタを使う方法も開発されています。糖尿病とは、血液中の糖分が異常に多くなってしまう病気で、その原因は様々です。この病気の唯一とも言える薬は、インシュリンというホルモンです。このとき使うインシュリンは、ブタから得たものが多く使われています。それだけではありません。インシュリンは膵臓にあるランゲルハンス島と呼ばれる細胞群で作られていますが、このランゲルハンス島がインシュリンを作ることができなくなったことで糖尿病となった患者さんに、ブタのランゲルハンス島をカプセルに入れて移植する方法が開発されてきています。カプセルには小さな穴があいていて、インシュリンや細胞に必要な養分などは通れますが、免疫に関係している細胞は通れないので、拒絶反応が起こらないのです。このような臓器移植に関しては、ブタの心臓の弁を人間に移植することは以前から行われてきましたし、最近では肝臓移植を待つ患者さんに、一時的にブタの肝臓を移植する方法も研究されています。
 どうです?ブタがどれほど人間の役に立っているか分かっていただけたでしょうか。ブタほど人間に深く関わり、なおかつとても重要な動物は他にはいないのです。

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